ネットショップの仕入れのために、
単身で中国に渡ってくれた息子。
商社からの派遣でもなく、なんのつてもない中で、
友人をひとりずつ増やし、人脈を豊かに持って中国での基盤を築いてくれました。
その中で、今日は中国の市場の様子についてお話しようと思います。
市場では中国人には商品を見せない
先日の記事で、現地で髪を切って、現地で買った服を着ていると、すっかり現地に溶け込んで中国人に間違われてしまう。すると、市場で「中国人はだめ」と言って断られてしまう、ということに触れました。
市場では、なぜ中国人だとお店の中に入るのを断られてしまうのかいうと・・・。
中国人はコピーの天才!
自分のお店で一生懸命開発した商品を、中国国内の他社にコピーされて販売されてしまうと困る。それで、国内販売をする中国人には見せないのです。
つまり、この市場のお客は外国人。外国人が訪れて商品を見て、世界の工場である中国のお店に、大量発注をしてくれるお客さんを相手にしているのです。
私が中国を訪れて、息子と息子の友人の中国人と一緒に市場に行ったとき、こんなことがありました。
「このお店に入ってみようか?」
私が入りたいと思ったお店は、ショーウィンドーに数点の見本のみ。
中はカーテンで隠されていて見えないようになっています。
入り口のカーテンをくぐって中に入らなくてはなりません。
まず、息子が中に入ろうとすると、中国語で
「だめだめ。中国人はだめ。」
と、入るのを阻止されました。
息子は、中国語がわからないふりをしています。
「え?どうしたの?」
わけのわからない私が、日本語で息子に尋ねると、ガイドとして付き添ってくれた中国人の友人が、
「中国人はだめだって。息子さんは中国人に見られたんですよ。」
と教えてくれました。
息子は外国人だから中国語がわからない、だから中に入らせてもらおう、ということで、中国語がわからないふりをしていたんでした。
日本人ということを理解してもらい、中に入れてもらえても、もちろん写真撮影はNGです。デザインが漏れるのを恐れているんです。
お店の方から信頼されて写真撮影もOKに
初めて訪れるお店では、写真はすべてNGですが、息子が何度も訪ねて親しくなったお店は、息子にだけはどんどん写真を撮らせてくれるようになりました。
信頼関係を持つことができるようになったのですね。
息子が撮影した写真が私のところに送られてきます。私は、そのデザインを見て、
「これとこれを買ってみて。」
という指示を出します。
どのデザインのものが売れるか、私がバイヤーとして判断するんです。現物を見ていないので、失敗することもしばしばでした。
それでも、いくつものデザインが当たって、数々のヒット商品を出すことができました。息子がお店の方と信頼関係を築いてくれなかったらできないことでした。
息子がお店で、ぱちぱちと撮り放題に写真を撮っていると、他のお客さんが入ってきて、同じように写真を撮ろうとします。このお店は写真OKかと思われるようです。すると「写真はだめだめ。」と言われる。
息子だけが、写真撮影を許されていたんです。
スパイを頼まれたことも・・・
そういえば、こんなエピソードもありました。
現地で人気のお店がありました。素敵なデザインのものがたくさんとあると評判になっていたカナディというお店。こちらのお店の商品は、タイにも輸出されていて、カナディの商品はタイの市場でもたくさん見かけました。
ある時、モーリーというお店のご主人が、息子にこんな頼みごとをしてきました。
「カナディに行って写真を撮ってきて見せてくれないか。」
というのです。
息子がさまざまなお店で写真撮影を許されていることを知っていたからです。
どうやら、モーリーのご主人はデザインに行き詰まっていた様子。つまり、息子はスパイをしてくれと頼まれたんです。
息子は、中国人の友人に相談し、
「せっかく信頼して写真を撮らせてくれているのだから、このお願いは受けないほうがいいです。しばらくして、モーリーにカナディと同じデザインの商品が並び始めたら、あなたが疑われてしまいます。そんなことになったら、せっかく築いたカナディとの信頼関係が崩れてしまいます。」
と言われて、もちろんですが、この申し出は受けませんでした。
中国の市場の方たちが、これほどデザインを守るためにがんばっていても、どのお店にも似たようなデザインのものが出回っていたりします。
ネットを見ればたくさんのデザインのものが販売されていますものね。そこから、コピーしているのでは、と推測されます。
まとめ
中国での息子の活躍はこういった感じでした。人との信頼関係を作ることで、仕入れ先を切り開いてきてくれた感があります。
広い広い中国の市場。何棟ものビルが立ち並び、その中に数えきれないほどのお店が入っています。その中から、自社のニーズにあい、条件にあう店を探し出す。何か月もかけて、1軒1軒あたり、試しに注文をしてみる。だめなら次。良ければ次回も注文してみる。問題があれば修正してもらう。そんなことを繰り返して、やっと、最良と思うお店にたどりつくことができます。
たいへんな苦労だったと思います。
息子には感謝でいっぱいです。
とくに、最初に中国に出かけた頃は、PM25のニュースで持ち切りのころでしたから。肺が真っ黒になってしまうのでは、と心配しました。
その頃に比べると、中国の空気もずいぶんときれいになったようです。そのあたりのことも、別の機会に取り上げてみたいと思います。
アパレルの市場での、こういった写真NGというのは、アイフォンケースやアクセサリーの市場に行った時は、まったくなし。デザインをコピーされても、あまり意味のない商品の場合には、写真撮影に関しては無頓着なようでした。
こうしたわけですから、言葉だけのガイドを雇い、にわかに中国に出かけてみても、なかなかうまくいくわけがありません。今は撤退してしまいましたが、ここで培ったノウハウや情報がもったいないと思えてなりません。
真剣に中国で工場を探している方がいらしたら、お力になりたい気持ちです。
では、今日はこのあたりで。
これからも中国での仕入れにまつわるお話。
お読みいただければ幸いです。